冬コミの申込ついでに池袋まで足を伸ばし、前から見たいと思っていた映画「ヒトラー最後の12日間」を鑑賞。あの独裁者アドルフ・ヒトラーがナチス・ドイツ敗戦の直前に自殺するまでの数日間を、その女性秘書の目を通して描いたドイツ製作の映画です。
この映画で描かれるヒトラーは、近しい人には優しく接する反面、”人間味あるヒトラー”とは正反対の、総統と言う名の”怪物”も彼の心に棲んでいるのが見えます。多面性のある心を持つ人間、ヒトラーがドイツの名優ブルーノ・ガンツによって最大限に表現されていたと思います。この映画の原作小説を書いた、主人公のヒトラーの秘書は、ホロコーストについて秘書は全く知らなかった(驚くべき事に当時のドイツ国民の大多数はそうだったらしい)らしくまた映像的にも触れられていないあたりが、ドイツ国内の反ナチス的な立場の論壇からはだいぶ批判に晒されたようだが、それでもこの映画のヒトラー、そして戦争に対する冷静な視線には鑑賞する価値があると思います。怪物にしか見えない帝国を追いかけた独裁者、その独裁者しか見ていない側近、敗戦が見えていても何も進言出来ない将軍達、酒におぼれ目前に迫った帝国の崩壊の恐怖から目を逸らす兵士、その中で現実的な立場で敗戦後を見つめていた軍人、そんな人間模様がスクリーンに抑えたトーンで描き出されます。敗戦間近の混乱のなかで、運命に対する不安を感じつつそれでも総統の事を信じつづけるしかない一人の女性秘書の目線で2時間半の物語は語られます。過去の戦争の事に興味があったら、決して見て損は無い映画だと思うのです。