2009年06月29日

【小説感想】シャングリ・ラ(池上永一著)

シャングリ・ラ 上 (角川文庫) シャングリ・ラ 下 (角川文庫)
GONZOでアニメ化されて現在放送中のシャングリラ原作を読んでみました。

アニメは、デザインの素晴らしさに比べてどうも絵のクオリティが高いとは感じられないのと、例の『炭素経済システム』がセリフと動画だけでは分かり辛かったので、小説ならば絵は脳内クオリティだし、文章で読めば難しい所も理解し易いかと思ったのですが…その辺良く分からなくても何とか読めました…^^;

ラノベでは経済ネタを扱った小説も最近見られるそうですが、この小説でも眼目となる、炭素取引で利益を上げるスーパーコンピューター『メデューサ』システム、それにより激動する炭素経済の描写はかなり面白かったです。経済金融通からしたらこのアイデアってどう思われるのかが気になりました。炭素排出量削減について、実質排出量と割り当てられた見かけ上の削減量の差から経済炭素という概念を作り出し、それを売り買いして利益を出すという発想は面白いですね。今現在も京都議定書の枠組みで行われる炭素排出量の商取引を金融商品として拡大したようなものでしょうか?金本位制での金が炭素になったようなものとするなら、その価値を担保するのが金なら金属の希少性、炭素の価値は小説内のアトラスという巨大構造物建設で継続的に見込める、炭素ナノチューブの巨大需要ということになっています。ネタとして上手いとこに目をつけたなと感心しました。

キャラクター描写は、とにかく暑苦しいほどのオカマ描写への筆の走り具合が素晴らしいです。でもモモコとミーコの二人へのオカマ愛(笑)が感じられる描写と違って、普通のキャラの妙な中二病的スーパー能力悪ノリ描写&後半のキャラ不死身の大安売りのバランスが取れてないのが、どうももったいないなぁと。アニメはエログロ描写が押さえ気味なのと、天才悪女・涼子の背景設定が膨らませてあるのがだいぶ原作と違う作りになってますねぇ。作中で一番の萌えキャラは炭素トレーダーの香凛でしょうけど、個人的には美邦様が一番ツボな気が…主人公の山猿には全然萌えないのがこの小説のラノベとして一番アレな点だと思います(笑)

ストーリー要素に関しては、上記の炭素経済うんぬんを除くと、意外にありがちな伝奇小説なので、何となく先が読めちゃうのがなぁ…終盤なんてほとんどキャラがただ走り回っているうちに終わっちゃうのが微妙でしたねぇ。一言で言うと『ラノベ萌える帝都物語』辺りが適当なんじゃないかと(笑)シャングリラを読む前に神道がらみの本を読んでいたのが、多少面白さをアップさせてくれたと思いましたね。

あとがきを見る限り、本人は沖縄出身の作家に見られるような天皇制に対するルサンチマンのようなものが描きたかったのではないかと思うのですが、うまく伏線が張れていたとは言いがたいし、掲載誌(ニュータイプ)の読者層からしてその要素は押さえられたのでしょう。いきおいラノベにありがちなガジェット小説の枠からあまりはみ出せていない気がして惜しまれる所です。全体的には、ちょっと笑っちゃう中二病ノリが許せれば、分量といいそれなりに読後感は得られるのでは無いかなと思いました。

=====以下ちょっとネタバレあります======

一つネタバレの疑問があるのですが、[皇統譜では初代神武天皇が男性ではない]って説があるんですかね?[女性天皇]自体は数人おられるにしても、基本は[男子による万世一系が天皇制の権力正当性]を担保しているわけで、その辺この話の根幹に関わる矛盾なんじゃないかと思うんですが…?[國子でなく草薙が神武天皇のクローン]ってことにすればつじつまが合うけど、多分掲載誌の前提で主人公が女の子って縛りが外せなかったのでしょうかね?まあそもそも[神武天皇の実在]は学問的に疑問が提されているそうなので、その辺諸説ありましょうが。

ちゅうか、あんたらイザナギとイザナミの新たなる国造りなら『なり余るもの』を『なり足らぬ所』に合わせなさいよ(国造り=神様のセックスなわけです)!
何か中途半端でしょ!…って中高生向けだとそれも無理ですかね(笑)

posted by Bomber at 18:15| Comment(0) | TrackBack(0) | その他感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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